3次元レーザー加工とは

レーザーとは?

LASER とは、”Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation”の頭文字を取ったものです。
“Light Amplification” = 光の増幅で、強い光であり
“Stimulated Emission of Radiation” = 放射の誘電放出は、レーザー光の作り方になります。
1916年にアインシュタイン博士が発表し、1960年にメイマン博士が実験に成功しました。
”光”は、自然界では、様々な波長(可視光の場合、色に相当します)が、連続して混ざり合っています。

工業でのレーザーは、『任意に特定の波長』を作り出して、『増幅した高いエネルギーを持った光』になります。
波長は、目的(金属切断、医療用、計測用など)により、媒質(レーザー発振のための物質 CO2(二酸化炭素)、YAG( イットリウム アルミニウム ガーネット)など)により作り分けます。
金属切断ならば、数kw. の高出力が得やすい炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)、細胞分離を行うレーシック手術ならば波長の短いエキシマレーザーなど 紫外線(UV)(波長0.1 ~ 0.4μm エキシマレーザーなど)、可視光線(波長0.4 ~ 0.7μm グリーンレーザーなど)、近赤外線(IR)(波長0.7 ~ 3.0μm YAGなど)から 遠赤外線(波長3.0μm 以上CO2 レーザーなど)までさまざまなレーザーが存在します。

レーザー加工とは?

レーザー加工は、熱加工です。熱は、物質の分子が動くことで発生いたします。
昔、理科の時間に太陽光を虫眼鏡で集光し、紙や木を燃やしたことがあったと思います。これは、太陽光を虫眼鏡により集光し、 先端のエネルギー密度の高い領域に紙、木を当てることで、太陽光が、紙、木に吸収され、分子を動かし熱を発生させることで燃やす実験です。

同様に一般的なレーザー加工は、レーザー発振器により、真っ直ぐな特定の光(特定の波長)を作り出し、レンズによる集光により、エネルギーの 高い領域を作り加工物質に吸収させることで分子を振動させることで、照射部を局所的に高い温度にし、熱加工を行っています。
レーザーは、特定の波長を集光することで、加工に必要な波長のエネルギーを高いエネルギー密度で、選択的に作り出すことができます。 エネルギー密度は、大パワーの金属切断用レーザー加工機の場合、エネルギー密度は、10,000,000W/㎠にもなります。
特徴は、① CAD/CAM のみで加工可能② 非接触加工③ 微細加工④ 幅広い材質に対応するなどが上げられます。

太陽工での集光
レーザー光での集光

レーザーマーキングとは?

レーザーマーキングとは、レーザーを加工物に照射し熱加工により、剥離する、彫る、酸化させる、切るなど行います。
一般的には、金属などを切断する出力 数kw.クラスのCO2、Fiberレーザーなど大パワー機は、レーザーマーキングとは呼ばず、波長 可視光線 500μm ~  近赤外線1,100μmと、遠赤外線 CO2 レーザーの内、中出力(数~ 100W 程度)の機器で、瞬間的に高く出力できるパルスレーザー及び Qスイッチパルスレーザーをレーザーマーキング用に使用します。レーザーマーキングのメリットは、下記が上げられます。

① CAD/CAMによる加工 前準備が、加工データ作成と固定治具によりスタートできます。スキャニングレーザーならばマスクも不要です。
また、修正や変更が、CAD/CAM により行えるため、コスト、時間面で有利です。
② 非接触加工 レーザー照射と加工部位との間に数十~数百mm(機器による固定)の距離があります。
例えば、加工部位が見えている場合、凹面でもマーキング可能です。
③ 微細加工 加工幅は、機器により20μ~で選択できます。但し相反する不利益もあるので、細い=良いではありません。
動作は、コンピュータ制御によりレーザー照射を移動し、線又は面で加工しますので、正確で早いです。
④ 幅広い材料に対応 レーザーは、波長の選択により幅広い材料に対応します。
汎用的には、遠赤外線レーザー CO2レーザー:プラスチック、ゴム、木材、布など
近赤外線レーザー YAG、Fiberレーザー:反射が強い(金、銀など)金属以外、金属一般、
可視光線 SHGレーザー:反射の強い金属も含む金属一般、セラミックなどに対応します。
⑤ 立体形状への加工 基本的には、レーザー用の集光レンズは、レンズとしての性能の良い単焦点レンズを使います。
これをズームレンズを使って焦点距離を変更するレーザーマーキング装置も販売されています。
ズームレンズにより、平面加工で、早いレーザー照射コントロールが可能な機構を持ったレーザー加工機、更に進化して、高さ方向(Z軸)への対応を可能にした製品も販売されています。
当社では、高さ方向へ対応を行った3次元レーザーマーキング装置を更に発展させた「3次元レーザーマーキングシステム」を自社開発により構築し、他社にはない立体形状への対応を可能にしました。

第2世代レーザー加工機による
3次元レーザー加工

ぐい呑み側面にも、3次元レーザー加工機より
レーザーマーキングを実現

レーザーの用語

- 当社が説明の際に使う用語です。学術的には違う場合もあります -

波長 「波長」とは、光の波の長さで、0.4μm 以下は、UV(紫外線) 0.4 ~ 0.7μm(可視光線) 0.7μm 以上は、IR(赤外線)と呼ばれます。
一般的に流通しているレーザー機器は、レーザーを作り出す物質固有の波長が有り、波長 10μm 近辺:CO2 波長1μm近辺:YAG, YVO4  波長 0.5μm 近辺:YAG SHG 波長 0.4μm 以下:YAG THG, エキシマ などと物質名で呼ばれることが、多いです。
レーザーでは、波長は特性を決める重要な特性で、主だった特性がきまります。
レーザーは、エネルギーの物質への吸収による熱加工により作用を行いますが、それぞれの波長には、吸収が出来る、出来ない、得意、不得意があり、 マーキング分野では、一般的にはCO2レーザー(波長 10.6μm)は、樹脂、木材、紙、布など YAGレーザー(波長 1.0μm)は金属一般 SHG(0.5μm)は、高反射材料などへのマーキングを得意としています。
この特性を複合的に使用すると、透明な樹脂に薄い金属膜を付け、これにYAG レーザーを照射すると樹脂にダメージを与えずに、 金属のみ剥離し模様の形成が可能です。
逆に、金属板に木皮を貼り付け、これにCO2レーザーを照射すると金属を傷つけずに木皮の除去により、模様を作成することが出来ます。
これは、レーザーの波長による物質への選択的作用と閾値(レーザー加工で作用を始めるエネルギー量)により、出来る加飾法です。
焦点距離 レーザー光をレンズにより集光して一番細くなった位置までの距離になります。
レーザーの特徴である「非接触加工」は、焦点距離により発生します。例えば、奥まった茶溜まりへのマーキングでは焦点距離が必要です。
焦点距離は、集光径と比例関係にありレーザーの作用としては、短いほうが有利になり、その反面、焦点深度が浅くなるため加工に制限が生まれます。実際の加工時には、仕上がり要求により、加工に適した焦点距離を選択します。
集光径 発振器で作り出したレーザー光をレンズで集光し、光の束がもっとも小さくなったところの直径。集光径+α(材料による)が、加工幅になります。 「レーザーは、レンズにより、集光先端に高いエネルギーの楕円球を作っており、その高いエネルギーの楕円球体で、加工を行っている」 と考えると加工結果と条件等の理解が行いやすいようです。
集光径は、波長と焦点距離に比例します。例えば、短い波長(UV)の医療用レーザーの場合、集光径は20μm 以下に設計されています。
同じエネルギーならば、集光径が小さくすれば、集光部(前述での楕円球内)のエネルギー密度は大きくなり、高いエネルギーでの 加工が可能になります。また、集光径が小さい場合、加工幅が狭くなるため、微細加工には適しています。
しかし、焦点深度(楕円球の高さに相当)も浅くなるため、たとえば切断できる金属は薄くなり、加工面のばらつきに対する許容が減り、 仕上がりのばらつきが発生しやすくなります。一般的に深堀や微細加工では、波長は加工内容で決定するので、焦点距離も短くすることで集光径を小さくし、 厚い製品の加工では、焦点距離を長くして集光径を大きくし加工深度を深くして加工を行います。
金属の厚板の場合、集光径が大きくなることで、楕円球内のエネルギー密度が低くなるのでレーザー出力、エネルギーを高めることで加工を実現しています。
加工幅 集光径+α(材料による)で、切り幅に相当し、のこぎり歯の幅、マジックの先端の太さに相当します。
切断の場合、加工幅は、”0”が理想ではあるが、材質や厚さによりレーザー種類、集光径が選択されるため、加工幅分を補正して加工を行います。
このため、加工幅を下回る細かい切断指定には、対応できない場合があります。
印字用レーザーの場合、加工幅はマジックの太さに相当するため、マジックで小さい文字は掛けないのと同様に制限ができます。
切断同様に、加工幅分は補正を掛けますが、再現できない場合がある(例えば漢字の払い部)ので、仕上がりには確認作業が必要になります。
一般的に加工幅は、光学設計により決定するため、変更できない又は、出来ても制限が多いです。
出力 カタログ上は、XXX ワットと表示されます。
この値は、レーザー出力はコントロール可能なため、大は小を兼ねますが、出力を絞り込むと出力値が安定しなくなるので その作業に特化したレーザー機器のほうが、仕上がりも綺麗になる場合が多いようです。
加工に求められる必要なエネルギーは決まっているため、出力が大きいと加工時間が短くなります。
実際の加工では、レーザーマーキング時は、パルスにより瞬間的に高いエネルギーを作り出して、加工を行っている場合が多いため、パルス特性が仕上がりに支配的になります。
加工時間 レーザー加工は、基本的には点加工になります。点をつなげて線を作り、線をつなげて面を作ります。
加工に必要なエネルギー量は、点を重ねることで加工製品に与えます。
重ねるエネルギー量はスピードによりコントロールしますので、高いエネルギーが必要な加工は、加工時間が長くなります。

立体形状への挑戦 自社開発3次元レーザーマーキングシステム

レーザー機器の進化により、レーザー機器メーカーでは、立体形状対応レーザーマーキング機器を販売しています。
しかし、実際に立体形状へのレーザー加工を行うと、加工できない部分があり、その機能を使わないレーザー加工業者も多数あります。

なぜ、そのようなことになったのでしょうか?

レーザー加工の場合、レーザー機が照射したエネルギー量 = 加工物質が吸収したエネルギー + 反射したエネルギー + 透過したエネルギー になり、「吸収したエネルギー」により発生した熱により、 切断、掘り込み、改質、剥離などを行います。
透過率は、レーザーの波長と材質、色により決定し、例えば透明な樹脂はCO2レーザーでは透過が少ないが、YAGレーザーでは透過が大きくなります。
このため、アクリルをカットするレーザー機器は、CO2 レーザーを採用します。
吸収率は、材質により数%~数十%で、反射がもっとも少ないのは、レーザー機器からの照射部と加工物質の加工面を直角に設置(垂直入射)した場合で、 加工面が斜めになるに従い、鏡と同様にレーザーの光が反射して、吸収するエネルギー量が減り、ある角度を超えるとまったく作用しなくなります。
3次元形状の場合、加工面が連続的に角度を変えるので、この反射率の変化により 仕上がりが安定しない = 3次元レーザー使えない との評価になっていました。 切断、レーザー溶接など点加工、線加工では、ロボットアーム先端にレーザー機器を装着して加工する方法もありますが、面加工を前提にすると 制御が複雑になってしまいます。

そこで弊社では、レーザー機器の加工精度、スピードを維持したまま、3次元レーザーマーキングの可能性を拡大する試みとして、加工製品を動かすことで 各加工面をレーザー光軌跡に垂直に設置することで、立体形状へのレーザーマーキングを実現する3 次元レーザーマーキングシステムを2012年に自社開発しました。
現在、3次元レーザーマーキングシステムは、1チャックで立体形状製品を加工することで、連続したマーキングも加工可能な第2世代3次元レーザーマーキング システムに成長いたしました。

加工製品を動作させることで
独自の意匠性を実現しました。

第2世代3次元レーザーマーキングシステムによる
アルミ真空蒸着レーザー剥離加工
卵型プラスチック製品への加工を実現した。

3次元レーザーマーキングでの鮮やかな表現 アルミ真空蒸着3次元レーザー剥離加工

アルミ真空蒸着は、乾式めっきの一種で、樹脂表面(主にPC、アクリルなど)に、数Åの薄いアルミニウムの層を施しカラーリングを行うことで、 樹脂上に金属光沢の鮮やかな色彩を作り出す加飾法です。類似技術としては、イオンプレーティング、スパッタリングなどがあります。
用途としては、遊技機器樹脂部品、自動車ライト類、化粧品パッケージの装飾などに利用されています。
レーザー剥離加工は、樹脂上のアルミ蒸着膜を部位的に剥離(除去)することで、意匠を作り出す技術です。
当社では、3次元レーザーマーキングシステムを独自開発することで、平面への加工技術だったアルミ真空蒸着レーザー剥離加工を、立体形状に対応した技術として 現在は、同業他社からの受注も受ける当社の特異技術となっています。

消灯時 <ハーフDOT 剥離サンプル> 点灯時

<地球儀サンプル>

<卵形状サンプル>

樹脂のアルミ蒸着で意匠を表現する方法としては、レーザー剥離加工と、アルミ蒸着前にマスキングを行う方法があります。
3次元レーザー剥離加工のマスキングと比較して特異な技術は、微細加工、凹凸への加工になります。線幅0.1mmで0.005mm単位で動作するため 細かな意匠も表現可能です。また、加工製品の凹凸にたいしても、データを認識させることで、加工可能になります。
更に、レーザー特異技術としては、ハーフDOT剥離加工があります。これは表面の剥離をDOTで行うことで、消灯時はアルミ蒸着の光沢表現、 点灯時は光の表現を可能にしました。この光の表現は、部分的にも可能、光の漏れ量コントロールもDOTを変えることで可能になるなど、新しい表現法として 提案しています。